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老いは美しい「さよなら僕の夏」 (工事中) [書籍/漫画感想]

さよなら僕の夏

さよなら僕の夏

  • 作者: レイ・ブラッドベリ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本

たんぽぽのお酒 (文学のおくりもの 1)

たんぽぽのお酒 (文学のおくりもの 1)

  • 作者: レイ・ブラッドベリ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1971/06
  • メディア: 単行本

友人に貸していただきました。いつもありがとうございます。                            「たんぽぽのお酒」は児童小説と書いてある割には、私の頭が悪いのか極めて難解かつ、長く、読解に大変、時間がかかってしまいました。児童の頃に読んだら絶対、根を上げてたと思います。           それに比べて「たんぽぽのお酒」からなんと55年後!に出された「さよなら僕の夏」は極めてこなれて読みやすかった。まあブラッドベリファンの人には物足りないかもしれないが。あとがきに書いてあったが「さよなら・・」は改めて書かれたというよりもともと「たんぽぽ・・・」の一部で「たんぽぽ・・・」を出す時に長すぎるのでカットされた部分とのことでそれを半世紀以上経って出す執念は凄い!と思いました。

「たんぽぽ・・・」の難解さは、まず比喩の凄さ。物事や感情、光の様な現象に至るまでブラッドベリ独特の比喩が爆発的に散りばめられていて、そのエネルギーにあてられて大変疲れてしまうのだ。その比喩は必ずしも共感できるものばかりではなく、なんじゃこりゃ?と思える様な表現も多い。それは即ち、ブラッドベリ自身の人生体験や感性や居住地域によるものであるから共感できなくて当たり前なのだが・・・。          そして、この小説は一つ物語ではなくいくつかの話のオムニバスになっていてダグラスは主人公というより解説者、目撃者、傍観者、語り手であり、読者とオムニバスの主人公の間に割って入る存在となっている。

対して「さよなら・・・」の方ではダグラスが主人公であり、物語が一つの流れを持っている。してみると「さよなら・・・」は「たんぽぽ・・・」のオムニバスの一つといえよう。

「たんぽぽ・・・」で私が好きなエピソードは年老いた女性が若者とひょんなことから出会い、女性が思い出話をするだけで若者と世界中を旅行でき、最後に自分の死期を悟って別れていく話である。人生の最後のとても美しい夢のある話である。人間誰しも(特に今の日本人は)老いることは醜く、憂鬱なことと捉えがちで、自分の年齢を隠してみたり、厚化粧をしてみたり、若作りをしてみたり、白髪染めをしてみたりするものだが、この小説は老いることの美しさ・すばらしさを全編において語っている様に思えた。自分の老いに誇りを持ち、かつ謙虚でもある。そうした悟りを持って人生の最後を生きられたなら人はどんなにか幸福であろう。無論、このエピソードや、ダグラスの曾祖母が死ぬシーンの様には、殆どの人は自分の死期を、物語の様に、事前に察知することはできない。死は突然やってくるものである。だが頭ではわかっていても大部分の人は今日と同じ明日が当然のようにやって来ると信じている。だから突然やってくる死を受け入れることはできないし、死に際しても多くの人は病院のベットの上で体に何本も口にもチューブをつけ、話すこともできずに死んでいくものだ。

マーラーの「私はこの世に忘れられ」という曲

 

 

 

 

 


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