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「スカイ・クロラ」中途半端が心地良い [映画/DVD感想]

http://sky.crawlers.jp/index.html

スカイ・クロラ ナビゲーター

スカイ・クロラ ナビゲーター

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本テレビ放送網
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ちょっと前になりますが、観ました。
ラストはやや物足りないですが、音楽も声も科白も映像もメカも世界観もとても良かったです。ただ、犬は要らない(笑)。押井氏はどうしても映画に自分の愛犬を出したいらしいが、私は犬が大嫌い(http://hanarezaru-bibi.blog.so-net.ne.jp/2005-06-04)なので、是非、ウサギかイグアナにして欲しい(笑)。

でも周囲の評判は"?"っていう人が多かったです。
私としては、イノセンスの格言合戦より科白はわかりやすかったし、アヴァロンのびっくりどっきりメカより戦闘機はかっこよかったと思うのですが・・・。事前に”これは恋愛映画だ”という女性客寄せのフレコミがあったために、「花より男子 ファイナル」が大好きの様な人々が恋愛映画のつもりで観に行って、単なる戦争映画なことに唖然としたり、”今の若い人たちに伝えたいことがある”とか押井氏がメディアで語ってたために、それを真に受けて映画の中に必至にメッセージを探そうして悩んだ人が多かったのかもしれない。まあ、確かに「花より男子」の様な、観客が楽しむために作られた、流行に媚びた映画と一緒の感覚で見られると、押井氏の単なる自己満足的なけしからん映画と取られてしまうし、宮崎アニメの様に自然や愛や平和に関する分かりやすいメッセージが込められた、子供も安心して見られる様な内容ではないので、難解!と取られてしまうのだろうが、それは比べる対象が間違っている。これは、押井氏の好きな物だけ集め散りばめて、共感できる人だけに良さが伝わればいい、というワガママな映画なので、まあ、そうは言っても勘違いして劇場に来てくれる人からの利益も胸算用のうちなので”メッセージ”とか”恋愛”とかいう言葉に騙された人は気の毒である。こういう「スターウォーズ」的な男の身勝手な夢物語映画は当然ながら現実的な考えをする女性陣にはウケは悪いと思う。
一方、従来の押井ファンにしてみれば、声に菊池凛子や栗山千明(「特急田中3号」は良かった!)を使ったりして、充分、世間に媚びてると取られるかもしれない。要するにどの客層にもターゲットを絞りきれてない内容なのであるが、熱心な押井ファンでもなければ、恋愛ドラマ好きでもない私には、この中途半端さが逆に心地よい。

菊池凛子は、「バベル」で意味もなくやたら脱ぎまくっていたが、それでいて全然いやらしさがなかった。モンゴロイドはコーカソイドよりもネオテニー化が進んでいるので、僕らから見ればオバサン顔女子高生でも欧米人から見れば、日本人は背が低くて幼顔でとても若く見えるので違和感がないのだろうが。そんな大人と子供が入り混じった雰囲気が、成長しない子供=キルドレのイメージとダブって監督には見えたのかもしれない。そして草薙水素も唐突に服をぬぎぬぎし出すしね(笑)

それにしても散香は翼の後ろにプロペラが付いててどうやって揚力が生まれるのか不思議だ。あれではスカイリィにやられるのも当然だろう。

ステルス機みたいなロストック社の重爆撃機が爆弾を落としつつじわじわ進んで飛ぶ様はなかなか迫力がある。

音楽が素晴らしかった。基本的にイノセンスの延長で非常に洒落た内容だが、出撃シーンの空気を切り裂く雰囲気には、攻殻の”ヌエ”コーラスが健在だった。

建物や家具、車や電話に到るまで実に古臭いアンティークなこだわりがある。戦闘機も全てプロペラだし、第ニ次大戦の頃を意識した世相だろう。そこで間違って携帯電話など出さない所が良い。パソコンはあるようだがわざわざキーの音をタイプライターにするこだわり様。ただ、店のかべかけテレビみたいのは唯一現代くさいが。お得意の近未来風ローテク/ハイテク入り混じり世界観である。キルドレにしてもその存在を明かすだけで生産過程は明かさない。その街の世界観は、路面電車など「アヴァロン」の延長線上にあるポーランドの風景である。確か、NHKの子供に授業を行う番組で押井氏は「見慣れた街の風景も誰もいない状態だとまるで違ったものに見える」と教えていたように、「アヴァロン」でも「スカイ・クロラ」でも、主要キャラ意外は人の気配がない、死に絶えた夜の街というのがクローズアップされている。「天使の卵」や「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」もそうだった。恐らく押井氏は活気ある人間の姿が鬱陶しくて好きではないのでは?。私もそういう嗜好があるのでこの世界観はとても馴染む。さらに戦場の景色も私の大好きな巨石の並ぶ風景である。続石にしろゴトビキ岩にしろ、巨石を神の依代として崇める古代信仰は世界中にあるが、なんといってもその最も著名なのはストーンヘンジであり、ケルト民族であろう。本作品にはそうしたメンヒルやストーンサークルに丁寧に古代文字まであしらったアイルランドの風景がストーリーとは全く無関係に点在している。こうした画の挿入こそかつて押井氏が言った「映画とはキャスティングやストーリー中心で作るものではなく、カメラに寄って切り取られる世界そのものをもって世に問うもの」ということなのだろう。だからそれらの風景やオブジェ、草薙水素の科白に意味なんか求めてはいけない。ただ映像美を楽しめばいいと思う。

これは恋愛映画ではない。恋愛映画とは出会いから結末に到るまでの長いジタバタした過程を描いたもので、現実は映画のようには行かずもっとドロドロしたものだろうが、「スカイ・クロラ」では、前世に恋人だったとはいえ、カンナミ・ユーイチには記憶がないのだから、フーコーや草薙水素の様にいきなり言い寄って来て唐突に服を脱ぎ始めるのはおかしいというか、恋愛のめんどくさい手間を省いたものである。つまりこれは男の夢であって、男とは元来、女性の好むムード作りとか雰囲気とか前置きはどーでもいいと思っている生き物なので、この映画の描く男女の形は極めて風俗的である(実際フーコはコールガールだしね)。
この映画の男女の出会いとクライマックス(でもSEXシーンなど肝心な所は描いていない)しか表現しておらず、人間的な部分を極力排除している。登場人物の顔も「イノセンス」が更に発展した能面のようで、血が通っていない。そしてとにかくカッコつけてる。笑えるシーンといえばボーリングでの、トキノ・ナオフミがストライクを出した後、二人が醒めてるシーンあるぐらいで、非常に淡々としている。例えば、大型冷蔵庫を開けた時、同じハイネケン風柄のビールだけがずらりと並んでいるように。普通、冷蔵庫ならバトワイザー柄や一番絞り柄やペットボトルやら牛乳やら色んな飲み物が混ざっているのが人間らしさだが、そういった個性が一切ない。そういうアニメ全体の雰囲気をとことん壊さない信念は流石だと思う。

それにしても草薙水素の目が怖くてよかった。あとササクラ・トワの目のクマが、「イノセンス」のハラウェイみたいで良かったっす。トキノ・ナオフミはトグサくんに雰囲気が似ている気がします。

原作は読んでないので全然知りません(笑)

ユダガワ・アイズが死んだあと、アイハラに生まれ変わってまた同じ様に新聞をたたむシーンは「イノセンス」でバトーとトグサがロクソ・ソルス社で受けた攻撃と同じで何回も同じシーンが繰り返される手法であるが正直あの時は3回目はくどい!と思ったが、今回は少ないので飽きなかった。

アンヌ隊員の声は知らなかった。もっと重要な役をあげて欲しいな。

”平和を実感するための終わりなき戦争”というのは、テーマとしては面白いが、戦争目的としては納得できない。戦争を子供にやらせている必要性も理解できないし。体は子供なのにSEXできるのもよくわからん(笑)。この映画はそういうことをむしろ考えない方が楽しめると思う。

アヴァロン Avalon

アヴァロン Avalon

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD



イノセンス スタンダード版

イノセンス スタンダード版

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メディア: DVD



バベル スタンダードエディション

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  • 出版社/メーカー: ギャガ・コミュニケーションズ
  • メディア: DVD



特急田中3号 DVD BOX

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  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • メディア: DVD


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nexus_6

お久しぶりです。散香は、実戦に間に合わなかった旧日本軍の戦闘機「震電」がモデルと思われます。YouTubeで震電を検索すると、テスト飛行の記録映像が見られます。


by nexus_6 (2008-09-20 03:47) 

はなれざる

nexus_6さん nice、コメントありがとうございます。
そうなんですか!知りませんでした。確かに、プッシャー・タイプの飛行機は、実験機はかなりあるが、結局みんな失敗している、とCGIスーパーバイザーの林弘幸氏は語っていました。それにしてもホントにYouTubeは何でもあるんですねぇ~

by はなれざる (2008-09-20 22:49) 

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