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他人のソラニン [書籍/漫画感想]

ソラニン 2 (2)

ソラニン 2 (2)

  • 作者: 浅野 いにお
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/05/02
  • メディア: コミック

 いやに時代ズレした内容だった。辛うじて携帯は出てくるがネットもパソコンも出てこない。80年代の初頭のバンドブームの懐かしい臭いがする。そうさ!クラブがなんだ!ラップがなんだ!ダンスがどーした!あの頃はバンドやってりゃ格好良かったんだ。不自然に顔の黒い奴とか、意味もなくガタイの良い奴なんかいなかったんだよ。金もねえーくせに服代だけに何万もつぎ込んでみょうちくりんな格好してキメてると思ってる奴らもな。俺は手先が不器用で音符も読めないから楽器が弾ける奴は、無条件で尊敬しちまうんだ。悪いか!

 「ソラニン」はわが故郷が舞台だが、別にそれで好きになったわけじゃない(それを知ったのは単行本を買ってからだ)。なんだろう、仲間と酒を飲んで騒ぐバカバカしいノリ、大学の薄汚い部室とクラブ活動、それに音楽と夢。どれも絶対自分が二度と望んでも手に入らないものばかりだ。郷愁?かな。でもそれだけじゃない。キャラクターが美人でも美男子でもない等身大で、カッコ良くもなんともない。真剣にやればやるほど滑稽だ。だから遠い架空の世界の話ではなく妙に親近感を覚えてしまう。
 
 もちろん、美化されてる部分はある、多摩川はあんなに広かねぇー、河原はあんなに綺麗じゃねー。でも壊しかけの旧小田急鉄橋の描写は細かくて気にいった。しかし分厚い縁取り眼鏡の80年代丸出しのキャラはどうよ。小汚くてダサい服装はどうよ。あんなんで女にモテるわけねー。デブでセンスも金も将来もなきゃ今時、三次元の彼女がいるわけねー。でもまあいいや、と許してしまえる魅力がある。

 しかし”死”で話を盛り上げる展開は許せねぇよな。”死”をノスタルジーやせつなさとやらの為に安易に使う話は嫌いだ。大体、1巻で主人公殺しちゃったら後、続かねーだろ!って思っていたら、すぐ終わっちまいやがんの。がっかりだ。もっと青春の悩みをダラダラ続けて欲しかったぜ。まあ現実には悩み続けたら老人ホームレス、悩むのやめたら35歳過ぎて過労死かうつ病だけどな。そんな都合よく若いうちに綺麗に格好よく死ねるもんじゃないよ、現実は。

 ”ソラニン”の意味?そんなもの知らねぇ。歌詞からもわからなかった。「空のかなた」って歌詞があって最後、「空が高いや」って科白があるから、メラニンを空ニンに文字ったんじゃないの?(爆)。って調べてみたら、じゃがいもの新芽に含まれる毒?なんだそりゃ。だからジャガイモの芽が伸びてるシーンがあるのか。それで”芽”衣子と”種”田なのか・・・・。そういう目で歌詞を見直せば「悪い種が芽を出して」という文句があるなー、なるほど。日常に潜む毒=自由ってとこか。

 そう言えば、展開が

TO-Y 1 (1)

TO-Y 1 (1)

  • 作者: 上條 淳士
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1991/04
  • メディア: -

に似てるよな。トーイは死ななかったけど、もし死んでたらどうなったの?ていう返礼がこの漫画なのかもって思った。両者は、方や非現実的な187cmの超2枚目、方や眼鏡顔のさえない男と相反するが、どちらもさえないバンド生活から始まって、まとわりついて応援する女がいて、やがて業界の目に留まり、プロデビューの話が来て別れ道になる。片方は引き受け、アイドルのバックバンドを経て頂点に達するが最後は嫌気がさして引退、バイクで事故るが死なずにマイナー音楽の世界で生き続ける。片方はアイドルのバックバンドを断りバイクで事故って死ぬ。他人の空似かもしれないが、妙に符号が一致する。象徴的なのは歌詞。トーイは一度も歌詞を口にしなかった。いつも口を空けて唄ってる状況証拠だけで読者を唸らせた。妙に生々しい歌詞をだしちゃうと現実的になりダサいと言われるの恐れたんだろうが、はなっからダサい種田はそんなこと気にしない。その思いっきりダサい歌詞も歌声も臆面なく吐き出される。作者は「現実はそんなに甘かねぇー」って言いたかったんだろうか?漫画的に考えれば、アイドルバックバンドを受けるにしろ断るにしろ最後は音楽的に成功するか、サラリーマンになって結婚でもして子供作ってあの頃はと回想して大団円となるのだがそれには芽衣子と種田の性格も変えないといけないのでそれはしたくなかったのかもしれない。作者のキャラへの強い思い入れが逆に種田を死なせてしまったのかも。

 芽衣子はいいキャラしてるよね。ヒラメ顔にソバカスだらけで純情で放任主義の親がいて、地方出身の一人暮らし。相手が貧乏でもブ男でも夢さえあれば愛さえあればついて行く。いやあこんな女は男の夢だね。種田のどこがいいのかさっぱりわからない。多分アヒルの摺りこみ現象でしょう。
デブで油ギッシュのくせに年上にも年下にももてる許せないキャラの加藤。これも男の夢だね。東京生まれの東京育ちでバイクなんか乗ってワイルドで背が高くて性格も良くて職も安定してる本来なら一番モテそうなビリーが彼女がいないっていう設定も笑える。種田は自殺じゃねえと信じたい。一番辛い部分をすっとばして書いてる作者はずるい。でも最後に、芽衣子が種田のギターで唄うシーンは、癪に障るけどグッときた。

 その他、ビリーが薬局の店先のカエル人形に「お前の人生って何なんだ?」と躍りながら問うところは最高。それは人間じゃねぇ!って思わずツッコミを入れたくなる(爆)。特にカエルのあっけらかんとした表情と動作がなんとも言えずシュール。あと、加藤が就職が決まった時「なんだこのモヤっとした気持ちは?」とベースを弾きまくるシーンも笑えると共に、前に進むことへの戸惑いを的確に感じさせる。

 夢と常に向き合いながら生きていくのは苦しいし辛いよね。ついついよそ見をして逃げ出したくなったり、そんなことは意味がないと鼻で笑って現実社会に埋没してしまうけど、人間いくら金があっても希望がなきゃ生きていけないことは、今の自殺社会がよく示しているよね。夢は掴んじまったらそれまでだが、叶わなければ死ぬまで追える。俺もピーターパン症候群と言われようが、いい加減落ち着け、と言われようが死ぬまで夢を追い続けて行くことの正しさをこの漫画を読んで励まされ再確信したのさ。


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