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美しい観光紹介ビデオ「かもめ食堂」 [映画/DVD感想]

かもめ食堂

かもめ食堂

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2006/09/27
  • メディア: DVD


遅まきながらDVDをレンタルした。
なんかフィンランド観光協会の宣伝フィルムみたいだった。すごく景色が綺麗で、すべてが淡々としていて、登場人物もみなあっさりして、どろどろした性格描写や人間関係なんか全然なくて、過去の経歴もほとんどわからない。なんでフィンランドで食堂開いてるのかわからないし、他の二人もなんでフィンランドに旅行に来たのかはっきりとはわからない。要するにフィンランドじゃなくてニュージーランドでもアルゼンチンでも横須賀でも別に良かったんじゃないか(笑)、フィンランドである必要性はないんじゃないかっていう映画である。食堂に訪ねてくる現地人もトラブルを抱えつつも内容がはっきりせず、しかもいつの間にか解決して、最後は大団円!みたいないい加減な展開である。大体、何の宣伝もしていないのにいつの間にか店が大繁盛っていうのもご都合主義だし、二人の旅行者もいつまでも無報酬で働いて金持ちで暇だなあ、と思うし、主人公も利益度外視でボランティアみたいな営業して店内も明るくて広くて、なんか金と時間の制限のない非現実的世界である。大体かもめ食堂は、ほとんどオーダーがなくてコーヒー以外は勝手に出てくる。料理内容はおにぎりメインといいつつなんでもOK。アルコールもOK。一体何屋さんなのかよくわからない。なによりそれだけバリエーションに応じられる食材と調理技術を用意している小林聡美扮する主人公は凄いよな。フィンランド語も堪能だし。合気道も達人だし。それにしても料理はみんな旨そうだし、まずいと文句を言う客も一人もいないのはちょっと出来すぎでしょう。

随所に散りばめられた、森・ムーミン・携帯電話(ノキア)・カラフルな北欧家具・白夜・港の風景が日本人に馴染みのないフィンランドを紹介する格好の観光ビデオになっている。
お洒落な音楽、明るい日差し、裕福で恰幅が良くて暖かい人たち、全てが奇麗事で現実味がない。自転車や森でエコライフを訴える健康的な生活(唯一もたいまさこが港で煙草を大げさにふかすシーンがそれをぶち壊しにしていて良い(爆))が、ああこんな所に住んでみたいなという気持ちを起こさせる。
もちろんそれだけではあまりに薄っぺらになってしまうので曖昧な悲しみや毒のある笑いも忘れてい
ない。30代~40代という年齢はみな親がそろそろ高齢化して介護とかあってやがて亡くなる世代だろう。そういう日本の高齢化社会の悲しみをそこはかとなく伝えてはいる。そこへいくと社会保障のきちんとしたフィンランドではお年寄りもそんな不安もなく幸せそうに見える。穿った見方をすれば日本の社会保障制度を批判していると言えなくもないが・・・・。
そして藁人形をフィンランド人の奥さんがくぎ打つシーンはかなり笑えた。痛がる夫の仕草も実に滑稽だ。また、もし片桐はいりがアラスカやタヒチへ行ったら?という想像シーンも普通、わざわざ映像化しないよな~と思えて可笑しい。

最後の方で、トミーヒルトネンと片桐はいりが手をパーンと打ち合わせるシーンがあるんですけどあれがどうもよくわからない。もたいまさこが戻って来て嬉しいのか?でももたいまさこが店に入ってきたあとトミーヒルトネンが入ってくるんですよね~。うーん。でもなんか観ているこっちも嬉しくなるシーンです。

でも3人は最後までお互いに敬語なんですよね。いくら親しくなってもどこか他人事というか相手の生活や人生には決して踏み込まない、言い争いもしない礼儀みたいなものがある。要するに3人とも旅先で出会った店員とお客様の手伝い関係のまま終わってしまいそれぞれの日常へも戻らず、かといって新しい雇用関係へも行かずに終わってしまう。人は変わってゆく、という小林聡美の劇中セリフがあるが、現実はこのまま止まっていて欲しくてもそのままではいられない。何もかも移り変わっていく。だからせめて映画の中だけでは、時間の止まったおとぎ話でいいじゃないか、というメッセージがこの映画にはこめられているのかもしれない。


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コメント 2

Flying Dog(さまよえる犬)

さるさん、お久しぶりです。
私も『かもめ食堂』見ました。小林聡美、もたいまさこ、片桐はいりの演技がすばらしいですね。北欧ってなんか自然が厳しいわりにほわーとかぼやーとかした感じなんですよ。私は好きですね。あと港でもたいまさこが電話をかけている前をいつもとおる猫を抱いたおじいさんが好きです。
さるさんの前のブログの犬の話、おもしろかったです。やつらはやつらなりに考えているんですよ。ちょっと犬が好きになりましたか?
by Flying Dog(さまよえる犬) (2007-01-22 23:15) 

はなれざる

コメントありがとうございます。ご無沙汰しております。
私も小林聡美は大好きだし、写楽の役者絵みたいな目つきの片桐はいりも好きです。フィンランドの風景も実に美しくて凄く行ってみたくなりました。が、物語としては掘り下げが今一つもの足りないというか、あっけないというか、え?これで終わっちゃうの?っていう感じだったんですよね~。まあ、そこがこの映画の魅力でもあるんでしょうね。
 あんなお行儀のいい犬だったら好きになれますね。なにしろ吠えたり飛びかかったりせずお座りして待ってますから(爆)。決して飼いたいとは思いませんが(笑)。
by はなれざる (2007-01-23 22:08) 

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