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パニック障害の男(1):それはある日突然やって来る [続き物]

初めてパニック障害の一種である空間恐怖症の発作を起こしたのは、スキーに行く途中の車の中だった。それ以前は夜中じゅう、車で走って朝、ゲレンデについて寝ないで一日中滑るなんてことをごく普通に行ってきたのだが、その日は車に4人で、私は後部座席に荷物と共に乗っていたのだが、しばらくすると、言い知れぬ不安に襲われた。何かこのまま車に乗っていて、もし気分が悪くなったら、車を止めて降りなきゃいけないから皆に迷惑がかかるなあ、と考えはじめたら急に気分が悪くなり始めた。動機が激しくなり息苦しくなり、頭から血が下がって、意識を喪失しそうになり、このままでは死んでしまうのではないかという不安感に襲われた。これは気のせいだ、と自分にいい聞かせたが不安・不快は増すばかり。ついに高速に乗る手前でその気持ちはピークに達した。「このまま高速に乗ってしまったら降りられない!」そう思った途端、突然、皆に、気分が悪いから今日は降りてタクシーで帰る、と告げ、車を降りてしまった。みんなはひどくびっくりしていたが、こちらは説明のしようがない、なにしろ自分でもわけがわからないのだ。風邪だとか適当に理由をつけて車を降りてしまった。ところが家に帰ると何ともないのだ。全くわけがわからなかった。
 2度目は、通勤途中の電車の中だった。私の通う電車の急行の朝のラッシュ状態は半端じゃない。もみくちゃにされ背広はしわだらけ、革靴は踏まれて真っ白。呼吸も満足にできないくらいぎゅうぎゅうに押し込まれるのだが、それまでは普通に乗れていた。しかし、その日は急行に乗り換えてからしばらくすると、立っていることが段々苦痛になり、やがて例の症状が現れ始めた。
急行は何駅もとばすし、朝の通勤時間は速度がノロノロだからなかなか次の駅につかない。
そんな中、身動きもできずに立っていると、突然このまま気分が悪くなっても降りられない、という考えが頭に浮かび、また心臓の鼓動が早まり、貧血が起き、意識喪失しそうになり、このままでは死んでしまうのではないかという恐怖に襲われた。しかし、前回と違って今回は電車を止めて降りることなどもちろんできない。やがて私はパニックを起こし、叫び、満員電車の中で無理やり暴れながら
床にしゃがみこんでしまった・・・・。


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