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”死”が普通で”生”がおかしい世界 [映画/DVD感想]

http://www.jca.apc.org/~misatoya/chichitokuraseba/kikaku.html

父と暮せば

父と暮せば

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2005/06/24
  • メディア: DVD

 宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信とくれば面白くないわけがない! 幽霊の父・竹造(原田)と美津江(宮沢)がじゃんけんを繰り返すシーンは涙なしでは見れません。全編に渡って暗い悲しい話の筈なのに、二人の軽快な広島弁のやり取りと原田芳雄のひょうきんな演技がそれを感じさせません。そしてやせすぎの宮沢りえは原爆後遺症に悩む役どころにぴったりです。本当にこの人はどんどん演技が巧くなりますよね。全身から滲み出る控えめな儚い色香、役の上とはいえ、こんな女性ならどんな男もほっとかないよね。美津江よりもっと綺麗だという幼馴染が話だけで出てこないのも納得がいきます。 「あの時の広島は、死んでいるのが当たり前で、生きている方がおかしかったんじゃ!」という美津江のなんと悲しい科白か。心に突き刺さる。 「今度はいつ会える?」と聞く美津江に「それはお前次第じゃ」と答える竹造。この科白から竹造の幽霊が実は、美津江自身であることがうかがえる。じゃこみそを作っているのも、風呂を焚いているのも、親友の形見の鉛筆を折っているのも竹造ではなくて、美津江自身である。つまり他人から見れば、総て美津江が一人で行っていることになる。本来、幽霊とはそういったものだろう。竹造の姿を借りて美津江自身が過去と決別しようしている物語だ。 昭和20年代の古い日本家屋も情緒が溢れていていい。破壊された広島のCGも嫌味がなくうまく出来ている。惜しむらくは木下(浅野)の出番が余りになさ過ぎること。もう少し科白と表情をあげてくれ!あれなら浅野忠信でなくても誰でも良かったじゃないか。物語の趣旨からそれるとはいえ恋愛の展開が具体的な描写もなしにとんとん拍子に行き過ぎる。 それにしてもまた図書館の話、私はよっぽど図書館と縁があるらしい。「広島で起きたような悲惨な出来事を後世に伝えるのが図書館の仕事じゃろ!」という竹造の科白、まさにそのとおりです。劇中に出てきた「原爆の図」を所蔵する丸木美術館が資金難で存続の危機に立たされている(8月1日付け朝日新聞朝刊)のは誠に悲しむべきことだ。多くの人(特に若者)がこういった問題に更に関心を寄せてくれることを望んで止まない。  

[ヒバクシャ・世界の終わりに] 
映していることはとても大事なことなのに、伝えていることはとても大切なメッセージなのに、なぜかとても眠かったです。なにか詰めが甘いというか、話が分散しすぎているというか、間延びしているというか、もっとショッキングな映像を入れても良かったのでは?字幕も縦書きで読みづらいし、直ぐ消えてしまうので目で追い切れませんでした。題名はとってもいいんですけどねぇ。 笑いながら聞く鎌仲監督のインタビュー手法も逆効果で真剣味が感じられませんでした。上映後の露骨な支援金集めもちょっと難波商人のど根性が入っていて(爆)、いまいち賛同できませんでした、ごめんなさい。 六ヶ所村は今、最も訪れたい場所の一つです。核燃料サイクル基地の現状は我々一般人の耳には殆ど入って来ないので次回作には期待したい所です。  http://rokkasho.ameblo.jp/


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takepii

こんにちは。本当にこの映画はよくできてました。映像ではなくて、せりふで原爆というものがあまりにも伝わってしまい、本当にリアルに戦争で傷つくのは身体だけでなく、一番は「こころ」であるということを本当に実感しました。原子力のニュースも本当にそれでいいのでしょうかねえ。
by takepii (2006-03-07 22:03) 

はなれざる

コメントありがとうございます。最近の原子力のニュース、良くない!ですよね。
そもそもバカブッシュがイラクの石油確保を目論んで戦争を起こしたところ内戦状態になって逆に石油需給がひっ迫し、慌てて石油に頼らないエネルギーを、なんて因果応報なことを言い出したのが発端です。スリーマイル島事件以来、折角、原発を封印してきて、それで日本もやや押さえ気味で済んでたのに、ここへ来て再処理技術協力だの妙に色めき立っちゃって全く困ったもんです。
by はなれざる (2006-03-08 20:52) 

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