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『メランコリア』 [映画/DVD感想]

http://melancholia.jp/
世界の終末が来たら決して人は清く正しく美しくはいられない。これはそういう映画だ。
世界の終末に何か意味のあることを?バカげている。

世界の終末に親しい友人や家族と美味しい物を食べて笑って楽しく過ごす?できはしない。

あらゆる科学の力、宗教の力を否定した映画。

巨大な惑星が地球に衝突して地球が消し飛ぶ・・・極めて単純なストーリーだが映像は難解だ。あらゆる事物がまるで象徴派の絵画のように、切り取られ意味をなすように見えるが、ラストに向けて全て無になっていく。
どんでん返しはないが裏切られる。都合の良いラストは用意されていない。そこにヒーローも奇跡も存在しない。人々は突然の恐怖に怯え、抗い、泣き、最後は諦める。希望のない映画だが、不思議と恐怖感はなくとても美しく澄み切っている。非日常の世界では、道徳的と言われてきた行為こそ醜く、非道徳的と言われてきた行為こそ美しい、価値観の逆転、それを教えてくれる映画。


今だにスバイダーマンのメリー・ジェーンのイメージが強いキルスティン、そのイメージを払拭したかったのか、今回は汚れ役に挑戦、無意味に幾度か裸を見せている。しかしエロチシズムはあっても過剰ないやらしさではない。とは言え、その非道徳的行為はアベックを気まずい空気にすること請け合いだ。

かと言ってSFファンには、前半の結婚式の人間ドラマなど退屈極まるし、ラストは、え?これで終わり?みたいな終わり方だ。宇宙人もいなければ、惑星に核ミサイルを打ち込んだりもしない。

だからこの作品は一般的な観客層に支持されないだろう。

しかし、よく考えると人間が自分の死を見れないように、世界の終わりを誰も見ることができないのだから、ラストはあれで良いと私は思う。

タルコフスキー『サクリファイス』では、やはり世界の終わり(終末戦争。と言っても音だけだが)がやって来て、それを救うために“魔女”と呼ばれる女性と姦淫すれば世界は救われると聞いた主人公の男が、その儀式を実行した。果たして世界は何事もなかったかのように元に戻ったが、男は発狂してしまう。
対してこの作品は、“魔女”が世界を救わず滅ぼすことを選択したら?という『サクリファイス』に対する返答であるように思える。
キルスティンがその魔女であり、男たちは無能であり、己のことしか考えていない。今の世界に救う価値などない、そう魔女が判定を下した映画である。

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