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「リアル」障害者は聖人ではない [書籍/漫画感想]

リアル 6 (6)

リアル 6 (6)

  • 作者: 井上 雄彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: コミック


 私は障害者ドラマとか嫌いだ。何か障害者を純粋な聖人とか生まれながらの善人とか特殊な才能を持つ超能力者の様に扱っているからだ。健常者と障害者が現実に日常を生きていくという感じではなく、どうしても両者の間に壁を作ってそこに悲しみや怒りや感動や恋愛感情のドラマを不自然に盛り上げようとする臭いが嫌いだった。
 だが、この「リアル」はそうではなかった。主人公戸川は悪人だ(爆)。彼はチームメイトを殴ってチームをクビになり賭け車椅子バスケをやって金を稼ぐというとんでもないキャラだった。作者が描きたかったことは「障害者は聖人」という枠というか常識をまず壊すことだった、と思う。その後、登場
したタイガースを作った虎もタトゥーなんか彫って決して善人キャラではないし、自らの愚行で障害者になった高橋もいじめはやるわ、煙草は吸うわ、歪んでるわやる気はないわで酷い性格だ。唯一の善人キャラであったヤマも病気が進行するにつれ人間的に弱く醜い部分をさらけ出してくる。といった具合に障害者と言えども健常者である野宮や高橋の両親と同じ人間的な悩みを抱えていたり、時には暴力を振るったり、悪意が芽生えたり、やる気をなくしたりするというごく当たり前のことを作者井上雄彦は訴えていると思う。要するに偽善的な作り物や、やらせではないドラマ、それが「リアル」だと思う。
 しかし井上雄彦は売れっ子だ。「スラムダンク」の根強い人気からバスケものを描いてくれという高まる社会的欲求は当然あると思うし、逆に「スラムダンク」のイメージから抜け出したいという思いからの直球でない変化球が「リアル」なんだと思う。主力作品は「バカボンド」だし、「リアル」はたまにしか連載しないから当然話もグダグダとだれてしまった。気が抜けてしまった。当時の「障害者は聖人ではない」というテーマから段々、障害の悲しみ、障害者を抱えた家族の苦しみというありきたりな障害者ドラマ展開になって来ている。もちろん戸川や野宮の人間的成長やタイガースの勝敗の行方、一向に進まない安積との恋愛関係など、明るい材料は色々あるが、最近はいずれも絵が雑で、顔がへのへのもへじの落書きのような状態が増え、やっぱり1巻の頃が一番丁寧で面白かったなあ。ナガノミツルの戸川協力もいまいち納得できる理由がないしな(ホモか?)。敵対してた方が面白かったよ。あとは高橋が野宮の仲介でいつタイガースに入るかだな。


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コメント 2

昔、NHKのドラマで「男たちの旅路」というのをやっていました。
そのエピソードのひとつに「車輪の一歩」(1979年放送)というのがありました。
そこに登場した「障害者」たちは、「引きこもり」だったり、
社会に対して拗ねていたり、「性」の悩みをもっていたりと
さまざまな姿を描いていました。
このドラマ自体は、当時も現在も批判される面がなくはないですが、
題名のとおり「一歩」になったドラマであったと思います。
少なくとも自分にとってはですが。

いい人も悪い人もいるんだ、障害をもっていることがハンデにならない社会をつくっていきたいものだと思います。
by (2006-12-28 00:54) 

はなれざる

コメントありがとうございます。
そうですか!そのドラマは不勉強で見ておりませんが、教育テレビで障害者の自立や手話ニュースなど扱うNHKらしい問題提議ですね。民放ドラマのありえない展開にはもううんざりです。
うちの職場に障害者に対面するとサービス態度が豹変する人が居て嫌いです。健常者も同じ様に接して欲しいものです。「同情」とか「可愛そう」という感情が前面に出てしまって、悪いことではないんでしょうが、何か疑問を感じます。結局、インフラやルールを変えた上で、障害者が自由に利用でき、僕らはできる範囲のサポートをし、過度のサービスは差別になるんじゃないかと思ったりします。
by はなれざる (2007-01-02 23:11) 

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