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”赤富士”は青かった...「北斎展」 [美術展/博物館感想]

http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=2040
 平日なのになんでこんな混んでるんだぁ~!(←お前もその一人だろう!)と、改めて日本の超高齢化社会の実態を思い知った。北斎を見たくても見えるのは白髪頭ばかり!しかもマナーを知らない人もいる。「足元の線の内側に入らないでくださぁ~い」と係員が声を枯らして叫んでも平気で目の前をずかずか入って来てなめ回すように見てるもんだから、思わず注意しちゃったよ!でも謝りもしねえで線の内側を行っちまいやがんの(怒)。まるで路側帯を走る車のようだ。他にも携帯を鳴らす奴はいるし、ホントに最近の老人はなっちょらん!(爆)
 俺もあんまり偉そうなことは言えないけどさ、せめて最低限のマナーは守ろうよ!
 そんなわけで肝心の北斎の画はあんまり楽しめませんでした。
 ギメ美術館の「凱風快晴」は日経新聞の「美の美」に載っていた通り、赤くなく青白いものでした。ケルン美術館のも。私は新聞の書評通りギメの方が東京国立博物館の従来の赤富士(平坦でケバケバしくてべったりした感じ)よりも立体感があって、爽やかで好きなのですが、見る人によって良し悪しはそれぞれ好みが違うようで、その辺が面白いですねぇ。くどい様ですが北斎の浮世絵は思った程大きくないので、富嶽三十六景もひたすら遠くから人の頭を抜って見るしかなかった。しくしく。「本所立川」(メトロポリタン)なんて良かったなあ。材木の生木の清清しさの間にそびえる富士が。誰も労働に勤しみ富士なんか構っていられない日常が、「尾州不二見原」にも「甲州石班沢」にも共通してあった。「琉球八景」にもなぜか富士山らしきものが描かれているのが笑った(北斎は琉球に行ったことがないのに描くところがいい根性してると思う)。
 百物語の「お岩さん」ちょうちんの目の皺が最高に怖い。でもどこかユーモラス。思わず、「さらやしき」のろくろ首の絵葉書を買ってしまったが誰にも送れない(爆)。
 「柳に烏図」(ボストン美術館)本邦初公開なのになぜか人気がない(地味で肉筆画だからか?)のでじっくり見れました。風(柳の枝だけで表す)に舞うカラス(ではないとの説も。実際、今のカラスとは全然違う)が遠くから手前に螺旋上に描かれていて色使いも殆どない様が、カラスの黒い無機的な目が何かシュールで怖い、ひどく印象的な構図の絵でした。
 ああでも「西瓜図」も「雷神図」なかった!なぜ?入れ替え?ちょっと楽しみにしてたのに。「下野黒髪山きりふりの滝」もあったか?気付かず。
 宗理期に描いた「ぎゃうとくしほはまよりのぼとのひかたをのぞむ」(ボストン)(読めん!”行徳の塩浜”で”干潟”だろうな)は、崖のひだひだが、西洋の誰かの絵に似ていて懐かしい感じが良かった。ドリトル先生の本の挿絵だっけ?ダリ?う~ん思い出せない。「玉后弾琴図」「日月竜図」どちらも雲の中切れ切れに藪睨む龍の姿が、気象と相まって迫力を増す。「夜鷹図」傘を持ち客を待つ様が最高に色っぽい!「羅漢図」アウトドアな服装(特に履物が良い)と手にもつ椀から昇り立つ煙が見事な曲線を描いていて心に残った。「軍鶏図」の足、良かったなあ。「獅子図」地味だが頭をぐるりと回す丁寧な筆遣いが好きだ。遺作にもっとも近いと言われる「富士越龍図」、蛇のように千切れ飛んでいく龍の様がまるで北斎の魂を天に飛ばしているようだった。
 それにしてもいいものはみんな海外にあるんだよなぁ、情けない!今日、能天気なカップルが「どうしてだろ?」とつぶやいていたが、彼らは明治時代に日本人自身がそれまでの日本美術をそっくり否定し、多くの仏像や絵画が無料同然で欧米に流れて今、買い戻そうと思っても絶対にできないほど高額になってしまった悲しい歴史を本当にご存知ないのだろうか。ジャポニズムが印象派画家等に大きな影響を与えた功績を差し引いても余りに大きな国家的損失である。本当の愛国心とは、靖国神社に参拝することなんかではなく、こういう日本の偉大な芸術を愛でる、大事にする、手放さない心ではないだろうか。


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