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恐るべきニートという差別 [社会風景]

ニートとは何か?さっぱりわからない。
goo辞書によれば「無職の人。無業者。職業にも学業にも職業訓練にも就いてない(就こうとしない)人のこと。〔イギリスの労働政策において用いられる語。近年,国内でもこのような若者の増加傾向が指摘されており,問題視されている〕」
漠然とし過ぎてますますわからない。ここで”若者”という言葉に重点を置き若者=青年と解釈し、
「青春期にある若い男女。一四、五歳から二四、五歳頃までをいうが、広く三〇代をも含めていう場合もある。」(goo辞書)とのこと。
ニートは「14歳~25歳の職業にも学業にも職業訓練にも就いてない人」という定義が成り立ってくるが、問題は”職業訓練”であり”就こうとしない”の定義である。
7月10日付け日本経済新聞朝刊東京版の「今を読み解く 『働かぬ若者』に新視点」という記事にニート八十万人以上とあるが、よくそういう数字を耳にするが一体どうやって調べたのか?まさか単にハローワークに登録しているかどうかで決めているのか?だとしたら相当、いい加減な定義だ。大体、今時の若者はハローワークなんか行かない。なんか”職安”=日雇いのおっさん=汚い=ダサい=危険 みたいなイメージがあって行きにくいんだそうな。ハローワークよりも管理者不明の怪しげなサイトや、駅前に置いてある無料バイト斡旋誌の方を選択してしまうのが今時の若者である。これは子供だけに責任があるのではなくてその親も、職安に行く人=失業者=人生の落伍者 みたいなイメージがあって自分の子供が職安に行くことを良しとしない傾向がある。結果、せいぜいよくてリクルートあたりに登録というのが関の山で、ハローワークには登録しない。ましてハローワークが行う職業訓練なんて絶対しない(っていうかそんなもの知らない)。だから今日も一生懸命バイトに精を出す若者はまさか自分がニートに数えられていることなど知る由もなく、またこの記事を書いているようないわゆる学芸大教授のような有識者もそんなことも知る由もなく、それを参考にする政治家も新聞社もそんなことは知る由も無く、そんな新聞記事を読む親世代の主婦もそんなことは知る由もない。
 フリーターという用語は古いため、定義もニートよりややしっかりしており「定職に就かず,アルバイトで生計を立てる人。就労意識の変化により,働き方のひとつとして定着。〔「平成 12 年版労働白書」ではフリーターを「年齢が 15~34 歳。アルバイト・パートである雇用者で,男性については継続就業年数が 1~5 年未満の者,女性については未婚で仕事を主にしている者。また,現在無業の者についてもパート,アルバイトの仕事を希望する者」と定義している〕(goo辞書より)となっている。つまり35歳以上はフリーターではない(ではなんだ?)。男性は34歳以下でも5年以上務めていればバイトでもフリーターではない(だそうだよ、君)。女性は既婚者は34歳以下でもフリーターではない。またこの「仕事を主にしている」が曲者で、これは「仕事を主にしていない者」とはどうやら学生と花嫁修行(死語化していたが細木かず子ブームで復活)者を指しているらしい。当然、仕事を希望する者とはハローワークに登録していることが重要となるのだろう。しかしハローワークの求人には、”一般”と”パート”しか存在しない。つまり”アルバイト”という定義は存在しないのだ。パートというと主婦のオバチャンを想定してしまうが男性でも非常勤でもパートはパートであり、ましてフリーターという定義は存在しないだ。自分で俺はパートだと名乗りにくいが・・・・・。では派遣は?とまたややこしい疑問が湧いてくるがそれはここでは置いておこう。

90年代前半までフリーターはサラリーマンより格好良い、自由といったポジティブなイメージで捉えられていたが現在では、ニートとセットで先の見えない=将来性のない、定職に就かない=飽きっぽい・怠け者、夢ばかり追っているピーターパン症候群といったネガティブなイメージが台頭している。前出の日経の記事でもフリーターやニートを「『学校卒業-正社員として就職』というコースを正常とみなし、そこからはみ出した人」「就業意欲を高める教育」を必要とする者、「目的意識が明白でないもの」、「夢見る使い捨て労働者」、「『実現可能性が薄い』夢を見続け、将来のない単純労働や下働きしている現実から目を逸らしている」、「夢から覚めた時、危機が生じる」「内的には幸福だが使い捨てられる大衆」としている。そして逆の存在(おそらく定職ついている人、勝ち組と言われる人か)は「不幸な少数のエリート」としている。
 フリーターは理想主義者か。それは過去の話で自殺者が3万人を超える現在では違う。現在のフリーターはなりたくてなった訳ではなく、フリーターしかなりようがなかったからフリーターをやっているのである。サラリーマンの労働条件は酷い。組合は形骸化し、サービス残業は月120時間を超え(内勤なら80時間ぐらいだが、営業には残業手当という概念がそもそもない)、寝る暇もない。目標達成できない者は死ねと豚呼ばわりされ、社内の人間関係は劣悪、ヒートアイランド現象と都心回帰、自殺による人身事故で通勤地獄は悪化、鬱を口にした者はリストラ、出産を口にした女性は
リストラ、夏季休暇もなく、昼休みもなく、片手で飯を食いながらキーボードを叩き、ひたすら働き続ける。当然、基礎体力のないものは辞めざるをえない。鬱の最大の原因は疲労であり、特に睡眠不足、寝ている間に夢を見なくなることが脳内物質であるセロトニンやノルエピネフリンに悪影響を及ぼすと言われている(「『うつ』をやめれば、楽になる」より)。サラリーマンを辞められた者は幸せである。家族のいる者は大抵辞められず、自殺、失踪に走る。自分を鬱と認めることはプライドが許さない。そしてもはや夢と化した終身雇用制(=定職)にしがみ付くのである。その意味ではサラリーマンの方が夢想家である。社会のシステムが変ったのにそれを認めようとはせず払われる保障のない保険費用を払う。疲労の蓄積は正しい判断能力を奪う(従ってJR福知山線の脱線事故のようなことが起きる)。国や政治や社会や会社や人生について冷静な判断能力を失い、権威に盲従していく。そしてある日突然破局がやってくる。今のフリーターは沈没船から逃げる鼠のようだ。船に乗っている奴らは、沈みかかっていることに気付かないか、わかっていてもお得意の使命感(=責任感)とやらで船と運命をともにするらしい。体が丈夫だと危機に鈍くなる。
 定職=頭脳労働、フリーター=肉体労働という認識も甘い。今やPCの普及で会社から頭脳労働を消え去り、ごく一部の専門職を除けば、暇な公務員以外は皆肉体労働である。考えることはほとんど機械がやっているのである。 
 だれだって安定した雇用を望んでいる。それには弱者も安全に働ける仕組みが必要だ。根性が足りないという精神論ではもはや成り立たない劣悪な成果主義がこの社会を覆っている。
 「ニートは、『豊かさにとらわれない生き方』」という意見もある。確かにフリーターは金はないが時間はたっぷりある。どっかの馬鹿な社長が「お金で買えないものはない」などとほざいていたが、人は夢だけでは生きられないがお金だけでも生きられない。夢は心、即ち希望であり、希望はお金では買えない。どんなに預金の額が増えても希望がなく心にいつも不安があれば、永遠に満たされることはない。どうせ将来が見えない時代なら昔からやりたかったことをやり今日一日を精一杯生きる、金は生きていく上で最小限あればいいというのも人生の一つの形である。しかしニートは、イメージとして親のすねかじり、ごくつぶし者、というイメージがある。しかし、以前から社会にはボンボン、土地成金、花嫁修業といった層は存在しており、ニートという言葉は彼らを単に侮蔑するだけでなく、パート労働者をも含めたサラリーマン以外の労働者を差別(=非難)するような用語に見えてならない。あたかも不況を作り出したのが彼らの責任だと言わんばかりである。実際は、腹黒な政治家や官僚、架空残業(サービス残業と全く対照的だ)をつける公務員、間抜けな経営者(もうその謝る禿げ頭は見たくない)がもたらしたものなのに弱者を苛める責任転嫁である。私の見るところ、もし定義通りのニートが存在するとすればそれは就業意欲の有無以前に単なる臆病者であり、またそうさせた原因は前出の人たちにあり、ニート自身は社会に直接的な害はない。
 三国志の時代、陰士、高士と呼ばれる人々が中国にはいた。かの諸葛孔明もその一人である。晴耕雨読し、時来らば起つ。そういう人たちは明治~大正時代の日本にも書生という名で見られる。人間はすぐ眼前の状態にだけとらわれがちだが、「閑に居て動を観、無事に居て変に備える」(吉川英治「三国志」より)のも大切なことだ。動乱の時代、敢えて隠棲生活を行ない、悠々時を待つ。そういう階層は時に国を動かし、歴史を動かす。「自分探し」などと揶揄されるが敵を知り己を知るのは兵法の第一歩である。生活に困らないのに誰だって働きたくたくはない。家でぐーたら寝ていたいのは同じである。人は皆怠け者であり、だからこの世に自動洗濯機は存在するのである。
怠け心は人間のごく自然な衝動である。問題はそれらをニートと称し、引きこもり=病的なイメージのみならず、犯罪者=害悪とし、外国人就労者に対する犯罪者扱いと同じように扱う側(マスコミと国家)にある。
 ニートは存在しない。それは支配者側が、被支配者側を管理しやすいよう、新に作り出した造語である。端的に言えば、不況で企業が雇用を控えリストラや過剰労働による退職からパートが増え、税金や年金を徴収しにくくなったが、献金や天下りで世話になっている企業側には何も言えないので、フリーターに代わる新たなマイナスイメージの用語を作り、”マニフェスト”などカタカナに弱いフリーターの親世代へも訴えかけることで、敢えて過酷な労働環境へと戻らせ、確実に税金、年金を納めさせるため(自分たちはきちんと収めてない癖に)に作り出された階層が”ニート”であろう。 

三国志〈4〉

三国志〈4〉

  • 作者: 吉川 英治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 文庫


「うつ」をやめれば、楽になる―やっかいな心の荷物をおろしなさい

「うつ」をやめれば、楽になる―やっかいな心の荷物をおろしなさい

  • 作者: フランク ミナース, ポール メイヤー
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本



この記事は、下記の本にパクられました(爆)。

「ニート」って言うな!

「ニート」って言うな!

  • 作者: 本田 由紀, 内藤 朝雄, 後藤 和智
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/01/17
  • メディア: 新書


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