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さっぱり?「パラオ-ふたつの人生 鬼才・中島敦と日本のゴーギャン・土方久功」 [美術展/博物館感想]


世田谷美術館 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 ていうか中島敦も土方久功も私は良く知りません(笑)。これは勉強で見に行きました。
 土方久功は、パラオの現地人に木彫りの方法を教え、それが今も土産物として売られているという話をNHKでやってました。
 中島敦の作品を劇化したものをDVDで流していましたが一人の主人公を何人もの役者が同時に演じるという手法が大変面白くてついつい見入ってしまいました。漫画では良くそういう手法ありますよね。山田玲司の「心の円卓会議」みたいな。でもそれを動きをつけて同時にやると実に笑える。

説明の方法は説明的・実証法で確立された知識を合理的に伝達していると考えられる。展示のわかりやすさについては、若干抽象的になり過ぎている様にも見えた。即ち、視角的効果を強調する余り解説を省き過ぎている様に思える。個々の資料の説明が不足している。従って解説文は非常に簡素であり、明解で読み易い文章となっていた。レベル基準の設定は、両氏をある程度知っている成人を対象にしている様で、全く知らない人が理解するには説明が少ないと思われる。
映像による補足説明としてスライドを多用している。解説や小説の原稿、本の内容を天井から吊るした映写機で壁に大きく画像を写して利用者の関心を惹き付けていた。反面、スライドを読み易くするため、展示室全体の照明が暗めになっている。また、中島の小説を演じた舞台のDVDを常時映しており、内容は興味深いが、声量が大きく、全体に響いてやや耳障りであった。ジオラマとして中島の小説を描いたからくり書物を展示しており、人形の仕草や照明・セットが変化する様が興味を引いた。
(1)動線 :単純・明快であった。かなり余裕を持った長さ・幅を取っておりゆったりと展示室内を移動できた。各展示室が直接連続する平面巡回型であり、全体として左回りの緩やかな順路が設定されつつも、明確な順路が設定されず自由な動線を含む半強制動線であった。
(2)視線:土方の絵画は数段に並べて展示されており当然、各々の中心の高さは自分の眼高よりも相当上ないし下になってしまう。中島の絵は自分の眼高よりやや下に統一されていた。また、スライドの映像は頭上の非常に高い位置にあり眺めづらい。これに対し彫刻(ブロンズ像)は100cm位の低い位置で展示されていた。広い台の上に放射状に数多く並べられていたため、中央の彫刻は側に寄って見ることができない。展示ケースの高さも110cm位であった。展示物との距離は十分に余裕があった。木彫レリーフも数段に並んでいて中段は眼高程度だが、最上段はかなり高く、見上げる感じになる。更にパラオの民族資料も展示しており視線はやや高めに設定してあった。
(3)温湿度:利用者にとっては適度で快適であった。
(4)照明:窓が無く自然光は取り入れていない。照度は平均化しておりメモは十分読み取れる程度だが、暗く陰気な感じもある。絵画も照度は低く、木彫レリーフは更に照度が低い。蛍光灯は使われておらず、ライティングレールで着脱式のスポットライトを使用し、演色性は良い。歩行用の照明は天井埋め込み型のダウンライトを使用している。壁の背景色は白で反射は少ない。壁面への照射角度は45度位である。彫刻については主光線と拡散光による副光線を用いて自然光に近づけている。また、展示室によって部屋全部を真っ暗にして、巨大な映像を浮かび上がらせる演出的な照明を施している。
展示ケースの板ガラスは全く無色で、厚めの物を使用している。展示ケースへの照明も外側からのスポットライトで内部に蛍光灯は使っていない。パラオの古い絵葉書を展示しているケースのガラス面に照明が若干映り込んでいる箇所もあった。また展示ケース前の床に埋め込まれいた非常口灯は展示の色・照度に比べて明る過ぎ、雰囲気を壊している様に思えた。展示ケースの底板は薄いセピア色を使用し柔らかい感じを出していた。
(5)生理的条件:ベンチを複数配置しており休憩が取れる。不自然な姿勢については、彫刻が低い位置のため若干上体を屈める感じになる。スライドの映像と、一番上の木彫レリーフについては上を向く姿勢を続けるため首が疲れる。絵葉書の展示ケースは大きめで多数の資料が入ってるため、詳細に見ようとすると前へのしかかる感じになる。床は板張りだが疲労を感じる硬度ではない。
(6)心理的条件:展示品の内容は変化に富んでおり、単調にならず飽きさせない。映像の挿入によって目先も変えている。
天井吊りの移動式パネルと、グレーの透明な大型カーテンで可変的に展示室を分割していた。モノを見る方向は水平が主だが、彫刻と絵葉書の展示ケースは回って見ることも可能だ。上下からは見れない。従って動きも直線運動と円運動になる。
壁の木彫レリーフや彫刻、展示ケース内の書籍や原稿は資料間隔がかなり密集しており圧迫感があるが、他の展示品については間がありゆったりと配置されていた。
1ケース、1壁面毎の展示品の種別に纏りがある。全体の流れとしては、まず土方の色艶やかな作品で目を惹き、そして中島のやや固い内容、最後に二人の交流を考察という分かり易く合理的な配列を形成している。原稿・書簡・雑誌・本・民具等が半数を占める点は美術館の企画として異例で、美術と文学の垣根を越え、同時代の二人の作家の活動を交差させようとする新しい視点での切り口であり、オリジナリティが感じられる。また、小規模展にしては小説や詩を盛り込んだ重厚な図録に企画側の意気込みが伝わって来る。資料の正確な理解と解釈にはやや欠けるものの、大型映像を駆使した演出性や、向こう側の利用者が透けて見える大型幕を使った動的な空間の割り当てがあった。劇的な盛り上がりはないが、童話の内容紹介等による情緒的な働きかけもあり、静かで落ち着いたモノとの交流を楽しむことができた。
[参考資料]
・倉田公裕著『新編 博物館学』東京堂出版、2004
・『美術と文学の交差試す 「パラオ-ふたつの人生」展』日本経済新聞2008年1月9日東京版朝刊

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はなれざる

takagakiさん、nice!ありがとうございます!
by はなれざる (2008-01-25 00:33) 

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