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怪人より人間が怖い「マタンゴ」 [映画/DVD感想]

マタンゴ

マタンゴ

  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
  • 発売日: 2003/12/25
  • メディア: DVD

今さら「マタンゴ」である。昭和38年の作品だから私の生まれる前だ。たがみよしひさ「軽井沢シンドローム」で盛んに名前が語られていて(登場人物の松沼純生の頭が似ているらしい) 以前から観たいと思いつつ機会を逃していたが、やっと観れた。
隔離された状況の中で、人々が疑心暗鬼にかられていく様は、「遊星からの物体X(1982)」に似てなくもない。しかし物体Xがホラーのくせに一人の女性も出てこないという極めて意欲的で斬新な内容なのに比べ(大体、SFホラーっていうと必然性もなく美人が出て来て金切り声をあげるもんだ)、「マタンゴ」は回想シーンも含め女性が一杯。特に女優:関口麻美役の水野久美の強気な眼差しと妖艶さがイイ。最後、手足がじわじわキノコ化した姿でなぜか顔や服はそのままというアンバランスな怪しさは圧巻である。彼女が唄う意味不明の歌詞も謎めいて滑稽である。
「水の溜まった石畳、アカシアの花、寂しく浮かんでいる。
 水の表を風が吹き抜けて、思い出をのせて揺れている」
特に“水の溜まった石畳”のフレーズは途中やラストにも繰り返し出てくる。なんのこっちゃ(爆)。

冒頭は、後ろ向き(なぜ後ろ向きかはラストで明かされる)の主人公、大学の先生役:村井研二が病室で語るシーン。窓の外のネオンはどこか近未来を思わせ、「ブレードランナー」の歓楽街のシーンを彷彿とさせる。重苦しい雰囲気から突然、青い海と白いヨットが駆ける眩しい世界が広がるオープニングのギャップは見事だ。円谷で東宝というとどうみても怪獣映画のノリの筈だが、ウクレレなんて弾いてどうみても若大将シリーズだ(爆)。金持ちのボンボンがヨットで遊ぶ様を皮肉る雇われ船員たちのボヤキは「太陽がいっぱい」で主人公たちを見てぼやく港の老人たちを思い出させた。また穏やかな海が一変強風になる展開も似ている。
かくして嵐に巻き込まれた一行は謎の島に漂着。そこで座礁した難破船(この難破船のボロボロ具合はなかなか見事)に遭遇。それが実は実験船(またはスパイ船)で、船長室の惨状や航海日誌、巨大キノコから謎が除々に明かされるシーンはやはり物体Xの、ノルウェー南極基地での自殺死体や記録ビデオ、エイリアンの標本から謎か解明されていくシーンとよく似ている。まあ恐怖映画の導入部はみんなそんなもんか(笑)。そして原水爆実験の放射能で変異した生物、もうこれはゴジラの世界だ。しかし怪獣が出てくる訳ではない。出て来るのはキノコ人間(笑)。恐い恐いっていうけど所詮、キノコだからなぁ(爆)。菌だもん。しかもこのキノコ人間、弱い。武器は特に無いし、腕はもげるし、ライフルで簡単に倒れます。主食はキノコ(マタンゴとはこのキノコの名前。共食いか。)のくせに意味もなく人間を襲うが、別にどうするわけでもない。本当に恐ろしいのは極限状態の中で食料を奪い合う人間の方。女性も体張った様々な駆け引きが展開。最後には「流されて」よろしく、主従を逆転した暴力による支配が待っている。

マタンゴを食べると除々にキノコ人間になるわけだが、キノコ化には段階があるのが面白い。丁度、「ザ・フライ」で主人公が除々にハエ化していくのに似ている。
第一段階:気持ち良くなる。幻覚が見え、ふわふわした気分に。マジックマッシュルームみたいなもんか?
第二段階:手足に菌糸の様なものが生えて、徐々にキノコ化。男性は顔にも湿疹状のキノコが出来る。まだ思考能力があり、言葉も喋れる。
第三段階:顔の輪郭が判らないほどキノコ化。しかしまだ人間の形状を保っている。もう言葉は喋れず、夜中や雨の日にはウッウッと唸りながら意味もなく難破船まで押し掛けて人間を襲ってさらう。まだキノコを食べている。
第四段階:完全にキノコ化。たくさんのキノコの集合体と化し、シメジかマイタケの様。しかしまだ手足があり歩ける。鳴き声はバルタン星人そのもの(でもこちらの方が本家)。森から出ずに集団で暮らし、エリア内に来た人間に襲いかかる。でもなんかユーモラス。
第五段階:ただの巨大なキノコになる(らしい)。もはや動けない。

正義漢面した艇長が最後裏切る展開はドンデンだ。また関口麻美と対照的である、純な主人公の恋人である学生(教え子に手を付けるな!):相馬明子が、最後キノコを食べながら恍惚とした表情で「先生~」と呼びかけるシーンは怖い!

そしてラスト(ネタバレで申し訳ない)、主人公が振り向くと顔にキノコが!!食べてないのになぜ?キノコ人間に抱きつかれたからか?それとも菌糸を吸い込んだ?やはり本人も無意識のうちに食べていたということなのだろうか?このラストシーンも秀逸である。
「ガス人間」同様、当時盛んに作られた怪奇映画の類であるが登場人物のシリアスな人間ドラマが、この作品を単なるB級ホラー以上のものにしてくれている。

軽井沢シンドローム (9)

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  • 作者: たがみ よしひさ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1985/12
  • メディア: 単行本

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  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日: 2006/09/21
  • メディア: DVD
 
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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2002/07/05
  • メディア: DVD
 
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  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2002/10/25
  • メディア: DVD
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    • 出版社/メーカー: 東宝
    • 発売日: 2005/06/24
    • メディア: DVD
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  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
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  • 発売日: 2003/11/27
  • メディア: DVD
 
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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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  • メディア: DVD
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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2007/02/23
  • メディア: DVD

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