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「ブロークン・フラワーズ」絶妙な肩すかしと最高の音楽 [映画/DVD感想]

ブロークンフラワーズ

ブロークンフラワーズ

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: DVD


http://www.brokenflowers.jp/
とにかく音楽が格好いい!オープニングとエンドクレジットに流れるグリーンホーンズ&ホリー・ゴーライトリー「THERE IS AN END」がめちゃくちゃ格好良い!そして主人公ビル・マーレイが車を運転してる最中に全編を通してかかるムラトゥ・アスタトゥケのエオチピアン・ジャズ。もうだらだらとした渋さが、目的の希薄な旅にぴったりだ。思わず足でリズムを取ってしまった。やっぱりジム・ジャームッシュは音楽が痺れる。
 ビル・マーレイは「ゴーストバスターズ」などおふざけ娯楽大作のイメージが僕の中では強いため、ジャームッシュ映画にはどうか?と思ったが、なかなかとぼけた味わいがマッチしてる。とくに喋らないビル・マーレイは新鮮な笑いがある。中年というより老人の味わいで登場したビル・マーレイが旅に出るや途端に格好良いモテモテ親父(ちなみにチョイ悪ではない。日本の中年はイタリア人の真似をしてもみっともないだけだから勘違いするな)になって、それが旅を続けるうちに段々もとに戻っていく、けれど旅立つ前とは何か?どこかが違っているでもどこか判らずに終わるもどかしさ。ジャームッシュらしい味わいだ、「ストレージャン・ザン・パラダイス」のノリ。何か起きそうで結局何も起きず(例えば空港の待合室でクロスワードパズルに熱中する女性を気にかけながらも何も話しかけないシーン等)振り出しに戻る。でもどこかペーソスで可笑しくて心に残る旅。見終わって直ぐにでも目的のない旅に出たくなった。
 ITを中心とした現代文明への皮肉も散りばめられている。コンピューターで成功したことをさかんに強調する主人公は恋人(ジュリー・デルビー。「ティコ・ムーン」最高!もっといい役で登場場面増やして欲しかった!)に逃げられ家の中は生活感が全くなく孤独で寒々している。友人が携帯で話しながら家の中にずかずか入ってきてそのまま話しながら出ていくシーンは傑作で、隣の席にもメールを送るバカな現代人への痛烈な皮肉となろう。
 ビル・マーレイは今回、笑いのために特にアクションやギャグをやるわけではない。日常の行動の中で何気ない発言やしぐさ(例えば人参を串刺しにして食べるシーン)が笑いを誘うのだ。さらに隣人のジェフリー・フライトとの漫才コンビ的掛け合いも絶妙、「ゴーストドッグ」のアイスクリーム屋と殺し屋のやり取りを思い出す。例えば、娘に禁煙中の煙草を注意され、「煙草じゃなくマリファナだ」と言い訳するジェフリー・フライトをとがめず、吸って「うん、間違いなくマリファナだ」と言い放つビル・マーレイ、最低の大人たちだ(爆)。
シャロン・ストーンは別人だ。誰が見ても彼女とは気付くまい。そしてその娘ロリータと来たら、あーっとこのシーンだけでも世の男性諸君は見る価値あり!(爆)でもこのシーンのおかげでテレビで放映されないか、されても絶対カットだ(爆)。
 ジェシカ・ラングも「キングコング」のイメージが僕の中では強烈で最初は誰だかわからなかった。老けたは老けたんだけど怖い、違うイメージの女性になった。犬に元恋人の主人公の名前を付けて、既に死んだと真顔で本人に言い放つのに笑った。
 フランセス・コンロイ、夫の気に入っている写真が実は昔の恋人のジョンストン(ビル・マーレイ)が撮っていたというシーンも笑える。
そして最後のティルダ・スウィトン、ジョンストンが花束を買うのがめんどくさくなって摘んで済ますシーンが笑えるが(その代わり死者には一番立派な花束を持っていくのが感動する)、それとも受け取ってもらえないことを予想しての行動か?ピンクのタイプライターは証拠物件なのか?旅の若者は息子か赤の他人か?ピンクのリボンは偶然か?手紙は友人のウィンストンが仕込んだものなのか?という数々の謎を残したまま映画は終了してしまう。日経新聞4/28夕刊で中条省平氏が「ラストの処理は肩すかしの感を拭えず」と評していたが、いいのだ!ジャームッシュ映画はそれで!むしろ肩すかし、裏切りこそがジャームシュの狙いなのだから。ちゃんと終わったら普通の映画になっちゃうだろう!
 全編、よくわからない映画だ。できればもう一回観て謎を解明(でもジャームシュの映画はそんなに深く考えていないので複線とか隠された謎なんてないと思うが・・)するか、さらに疑問の海にはまりたくなる映画だ。「ナイト・オン・ザ・プラネット」的オムニバスはあるが内容のエンターテイメント性は全くない、静かで淡々とした味わい深い、それでいて肩のこらない気軽に観れる映画である。

ストレンジャー・ザン・パラダイス

ストレンジャー・ザン・パラダイス

  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1999/12/16
  • メディア: DVD


ゴースト・ドッグ

ゴースト・ドッグ

  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2000/06/23
  • メディア: DVD


ナイト・オン・ザ・プラネット

ナイト・オン・ザ・プラネット

  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1999/12/16
  • メディア: DVD


キングコング

キングコング

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2000/10/27
  • メディア: DVD


ゴーストバスターズ

ゴーストバスターズ

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 1999/11/26
  • メディア: DVD

ティコ・ムーン

ティコ・ムーン

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2000/02/19
  • メディア: DVD


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