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田舎もんの立身出世物語「プラネテス」 [書籍/漫画感想]

プラネテス (4)

プラネテス (4)

  • 作者: 幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/02/23
  • メディア: コミック


 この漫画では、宇宙を最前線の変化の激しい都会=東京として描き、一方、地球を未来永劫変わらない場所である田舎=故郷として表している。その証拠に地球の風景に都会は殆ど出てこないし、携帯もパソコンもなくフィーもテレビ付きとはいえ公衆電話で話している。まるで発展が止まっているというか逆行している感じ。私は東京出身なので故郷=田舎というものを知らない。子供の頃の風景など一つも残っていない(T-T)。故に、常に変わらない場所としての故郷を実感・共感できないし、辛くなったら都合よく逃げ込めるふるさとという存在を羨ましく思う。言わば、この物語は、地方から一旗上げに都会にやって来て、高速車(ロケット)で湾岸(宇宙)あたりをすっ飛ばして、生活に疲れたらたまの休みに帰省したりする東京ではごく一般的な青年の青春成り上がり物語だ。田舎に住む子どもたちはこの余りに変わらない状況を疎ましく思い、盗んだバイクで走り出したり(爆)するらしいが、変化の常態化に戸惑い疲れた都会人は田舎暮らしを夢見て自転車やローカル線を好んで乗ったりする。
 それにしてもここで出てくる故郷は余りにレトロ、まるで1970年代だ。ちゃぶ台やコタツで摂る夕食、エプロンをして家事の全てを切り盛りして浮気もせず待つ女を演じるしっかりかあちゃん風専業主婦(絶滅危惧種指定)、そんな妻に全てを支配させてる振りして実は全てを奪っている夫(今ならぜってい熟年離婚)、友達親子と放任主義(団塊の世代だな。親子断絶世代の私からすると父と息子が対等で仲が良いのは気持ち悪い)、何時も青空(泳げる海がほとんどないほど環境汚染が進んでいるのに?)、縁側で塩をかけて食うスイカ、などなどドラエモン&サザエさん&まるちゃん張りのノスタルジイ満載なのだ。全く2070年代という設定を無視したこの環境はもはやあっぱれという他はない。何しろまだ煙草を吸ってる奴がいる!この月面基地の環境は今の東京そのものだ。そしてテロリストはなぜかハンフリー・ボガートだ(^-^)/
 通常、普段ぴったり一緒に仕事していると、プライベートまで一緒に過ごしたくはない(漫才コンビやアイドルグループがいい例)。しかし、このデブリ拾い達はプライベートでも仲が良いのが解せない。そして展開が早っ。たまたま都合よく後任で入った(今時の会社は、一人分の給料が増えるので引継ぎなんてしないぞ。)女の子とSEXシーンもなしに結婚してしまう。タナベは何もかも愛してるならハチマキ以外の人でも良かったんじゃないか?。また別の人とくっついちゃうんじゃないか?こういう漫画は女性に受けるだろうが、男性にはちと色気がない(^-^)/。大体、ユーリの奥さんもタナベもフィーも男みたいだ。さすが宇宙と地球の境目がないというテーマから男と女の境目も宇宙においては存在しないと言わんばかりだ。赤の他人に裸で接するサリーも、それに対して眠っちゃうハチマキもありえね~(?_?)。
 戦艦にもロボットにも宇宙人にも飽きた昨今、ロハスブームで宇宙のゴミ拾い屋という着眼点は良いが、宇宙を憂う前に地球を憂え!とつい言いたくなる。テロの目的も薄い。今時のテロとは生存をかけたギリギリの選択であり、グリーンピース張りの環境問題で起こすテロは80年代の遺物だ。なんとなくティターンズとエウォーゴの戦いをパクっているようにも見えるが。悪人がいない。テロリスト側も支配者もみな善人ばかりだ。
 「サキノハカという黒い花」で撃とうするハチマキにハキムが放つセリフ(修羅に堕ちるとか宇宙の破壊者とか)はスターウォーズのダークサイドへのオマージュだろう(爆)。
 結婚の報告をしたハチマキとタナベが散歩に出かけた際、かーちゃんが歌っている曲がなぜかRCサクセションの「夜の散歩をしないかね」。ファンとしてこれは気に入った(^-^)/。
 私は犬が大嫌いだ。従って犬を拾って来て家の中で飼うという行為は信じられない(猫は好きだから許す(爆))。絶対、「うるさい」と文句を言う側に回る。大体彼らが共和国のテロリストと同様の悪の象徴にされているのが納得がいかない。どう見てもアルバートとフィーの方が間違っているだろう。大体、母親を蹴るアルバートはどう見ても優しい子とは言えない。犬を大事にする前に隣人を大事にしろ!フィーは子どもがいるくせにタバコ吸うなって。大体、半年吸わないですめばやめられるって!おまけにバイクに子供乗っけて暴走だ?事故ったらどうする?かっこ良ければなんでもありなのが許せん!夫も夫だ。普段家事をやってる専業主夫のくせにすぐ仕事にも復帰できるとは恵まれた環境だ。フィーがこの夫のどこに惹かれたのか皆目見当がつかない。
 私は野球が大嫌いだ。子供の頃から野球で遊んだことがない。昔、職場で強制的に草野球チームに入れられたことがあってくそ暑いグランドでド恥ずかしいユニフォーム着せられて本当に嫌で堪らなかった。「赤い星、白いタマ」で一人ぐらい野球をすることに異を唱える奴がいてもいいと思うが。まるで野球を嫌いな人(犬の嫌いな人も)などこの世に存在しないと言わんばかりだ。
 この時代の主要エネルギーは核融合らしいが、コストとエネルギー効率から燃料電池にすら手を焼いている様ではそれは百年経っても実現不可能だ(^-^)/。
 この漫画にはスペースシャトル型のロケットが宇宙間を往復しているようだが1986年のチャレンジャーと2003年のコロンビアの事故で再使用可能な宇宙船の開発は完全な失敗に終わったことをNASAも認めている。国際宇宙ステーションの開発も暗雲に乗り上げ、現在は使い捨てロケットとパラシュート着陸が、一番有効且つ実用的な手段だ。
 木星に着いたハチマキが叫ぶ「さよならジュピター」映画館に観に行ったさ。映画は酷い(三浦智和が全裸で宇宙を飛ぶぞ(爆))が、原作は本当に良かった・・・。でも「2001年宇宙の旅」の完全なパクリだが(-_-;。
 人間が宇宙の一部ということを宇宙に行かないと気付けないとはハチマキも鈍い。人間の体内成分は超新星爆発によって恒星内の核が宇宙に散らばったことによって成り立っているのだ。
 何はともあれ突っ込みどころ満載の飽きさせない展開だ。

さよならジュピター〈上〉

さよならジュピター〈上〉

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 1999/05
  • メディア: 文庫

緊迫感溢れた傑作



さよならジュピター デラックス版

さよならジュピター デラックス版

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2003/03/21
  • メディア: DVD

セット(というか模型)が余りに情けない。10億何に使ったんだか。



シングルマン

シングルマン

  • アーティスト: RCサクセション
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1996/09/01
  • メディア: CD

「夜の散歩をしないかね」他名曲が目白押し。聞け!



カサブランカ

カサブランカ

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2005/01/10
  • メディア: DVD

言うまでもなくボガートの傑作。偶然にも本日NHK衛星で放送


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コメント 2

Flying Dog

すいません。上のコメント、MacのSafari上で書いたら文字バケしてしまいました。Safariからは無理なのかな。
さるさん嫌いなもの多すぎ! 親父と息子が仲良くても、火星でみんなで野球してても、かーちゃんがエプロンしててもタバコ吸ってもバイクに子ども乗せて走ってもいーじゃんいーじゃん。アパートでの犬の多頭飼いは良くないけど、捨て犬を拾ってしまうアルは優しい子です。フィーさんは高給取りなのできっと一戸建て一戸建てをかってくれるさ。あくまでテーマは「愛」です! ちなみに4
巻で終わりです・・・。
by Flying Dog (2006-02-08 21:47) 

はなれざる

コメントありがとうございます。
4巻で終わり・・・お借りしたものなので今日気付きました(←バカ)。ケナシ過ぎたので最後にヨイショしとこうと思って・・。恥ずかしいので削除しました(爆)。全体的には気に入ってるんですよ~。
中国人は犬を食べますよね(赤犬が美味しい)。古代マヤ人は黒い食用犬を飼ってたそうです。私達は牛を食べますが、インドでは牛は神様ですよね。千葉では打ち上げられたイルカを地元の人が食べちゃいました(爆)。てな具合で動物に対する感情は千差万別なので、他人が犬を可愛がる気持ちも否定するつもりはないのですが、何か同調圧力みたいなものを感じるので(野球や親子関係も)。公園のベンチでくつろいでる時向こうから放し飼いの犬が走ってくると嫌煙権ならぬ嫌犬権(爆)を行使したくなります。
by はなれざる (2006-02-09 22:07) 

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