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世界は砂漠と化す [エコ満足]

”明日のない生活というのは、言葉だけでいうとどうということはないが、自分がそういう状況に置かれてみると、人間というのは本当に何時でも「明日」のことを考えられるから生きていけるんだな、ってことがつくづくわかったよ”(椎名誠「ハマボウフウの花や風」より)

 今の日本には希望(明日)がない。なぜこうなってしまったのか。例えばある地域を営業で新規開拓したとしよう。住民や地元企業の総てを顧客にしてしまったら、もう新たな新規顧客は望めない。また、獲得した顧客も収入が定期的になければ、ノルマはこなせない。そこで我々は、2つの選択がある。一つは他人の顧客を奪うこと。これはライバル企業でも同僚でもよい。そしてもう一つは新たな住民や企業が育つまで待つことである。これは休耕地的な発想である。前者はヨーロッパ的、後者はアジア的と言ってもいいかもしれない。また、前者は農耕的、後者は牧畜的(または焼畑的)でもある。以前、サラリーマンをしていた時感じたことだが、私たちより上の世代(いわゆる団塊の世代以上)は、とにかく稼げる時に後先考えずに稼ぐだけ稼いじまう、というやり方が非常に目立ったような気がする。これは、総ての考え方に共通する。石油を掘れるだけ掘ってしまうとか、砂漠に大規模プランテーションを作って何万年かけて溜まった地下水を根こそぎ抜き取ってしまうとか。アマゾン大森林を残らず燃やしてしまうとか。とにかく後の人々、自分たちの子孫がどうなろうと知ったこっちゃない、後は野となれ山となれ的な考え方が横行している。
 世界最大の砂漠であるサハラは何万年も昔、象がくらす大森林であったことは、当時の人々が残した岩の壁画からも証明されている。何万年もかけてサハラを砂漠にしたのは遊牧民であり、ウシの時代からウマの時代、ラクダの時代へと移り行く様を壁画は教えてくれる。そして、今、世界中でもっと恐ろしく早いスピードで世界は砂漠化している。ハイウェイなど大規模開発が進むアマゾン、エビの養殖で消えるインドネシアのマングローブ、温暖化による凍土氷解で消えるシベリアのタイガ、中国の急速な経済発展による酸性雨で立ち枯れる日本の森林。10億のインドや13億の中国が2億のアメリカと同じモータリゼーションに走ったら世界はどうなるのか?滅びるしかない。地下水のくみ上げは塩害を生み、インドのデカン高原やアメリカの中央部では二度と作物が育たない土地も増加している。休耕田、再生という時間を与えなければどうようしもない。にも係らず世界は相変わらず焼畑的開発をやめようとしない。サハラからエジプト(四大文明)→ギリシャ→ローマ→ゲルマン→アメリカ→ブラジル(BRICs)と世界を一周した焼畑文明はついにこの世の果てまでやってきてしまった。もう地球上に開発すべきフロンティアは残っていない。放牧する草原も焼く森林もない。
 これは何も土地に限った話ではない。後先を考えない焼畑的経済は人の心まで砂漠化してしまった。日本の自殺者は年間3万人だ。毎週”魔の月曜日”にはそこかしこで人身事故が起きる。国やマスコミは今頃になって人材育成が重要などと言って来たが遅い!場当たり的、足りなくなったら派遣で補充、終わったらリストラというやり方で、教育を怠ってきた企業のツケを今、日本全国が背負わされている。膨大な国や地方自治体の借金はもう誰にも払えず膨らむ一方だ。”サラリーマンは気楽な稼業””公務員は給料が安い”と言われたのも今は昔、公務員の特権ばかりが目につき、サラリーマンは不味いビールもどきを飲まされ、それにも税金をかけられる。出世の道も、金もない。結婚もできない。結婚すれば子供のために地獄のようなサービス残業で自殺か失踪しかない。あとはホームレスの生活が待っている。東京はホームレスでいっぱいだ。ホームレスはかつて”ホントは金持ちで好きでやってる”という変な伝説があった。確かに昔はそういうホームレスもいたが、今は違う。あれは完全に”スラム”だ。メキシコなど世界中の大都市で問題になっているスラム街をなぜか東京ではその存在を認めようとしない。相変わらずホームレスを貴族のように扱う。
 一生懸命、勉強して大学を出ても職もない。親は自分にできないことを子供には要求する。一等賞以外は認めない。出来なければ殴る蹴る。子供は毒薬や包丁で反撃する。
 もう僕らは何年も前から希望なき世界に生きている。日本はなぜ中国に反感を抱くのか。同じアジア人なのに自分たちは準白人(名誉白人)でチャイニーズより上だと奢っているらしい。日本はアメリカには戦争で負けたから大人しく従うが。中国には負けていないと錯覚しているらしいが大きな誤解である。日本が戦った相手はアメリカのみではなく連合国であり、その中には中国も含まれているのだ。13億の何十倍もの面積をもつ国とまともに争っても勝負にはならない。勝敗は最初から付いているのだ。60年も前に。
 日本に、もはや未来はない。かといって人は過去には生きれない。仮想空間も所詮、夢だ。再生はもう間に合わない。人は今を生きつつ静かに滅びていくしかない。それは誰にも止められない。 

ハマボウフウの花や風

ハマボウフウの花や風

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 文庫


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