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そつがないが地味な「ナルニア国物語」 [映画/DVD感想]

ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女

ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2006/07/26
  • メディア: DVD


http://www.disney.co.jp/movies/narnia/shell_content.html
多くの物語の中でこれだけは、映像化してほしくなかったような、いや最も待ち望んでいたような複雑な気持ちで迎えた「ナルニア国物語」。ディズニーによる映画化という話を最初に聞いた時、内容が余りに俗っぽくなってしまうのでは?と非常に不安がよぎったが、それは杞憂だった。むしろ、イメージの固定化を避ける余りに、製作者サイドの思い入れや派手な演出を排除し、規定の概念を思いっきり取り去った、地味なナルニアであった。その象徴とも言えるのがサンタクロースとケア・パラベル城である。あのサンタ特有の真っ赤な衣装にしょうちゃん帽、真っ白な袋を抱えた白い髭のお爺さんはそこには居なくて、何処にでもいる様な平凡で地味な衣装のお爺さんになっていた(ルーシーは一目でサンタさんだ!と叫んでいたが、なぜわかったんだ?)。アメリカが生み出したサンタという虚像はそこにはなく北欧神話に乗っ取った上品な姿となったがむしろ原作では、アメリカナイズされた派手サンタに近いイメージだったように思う。
 ケア・パラベル城は原作では三角旗がはためく尖塔が立ち並び、、でこぼこの塀で覆われた、シンデレラ城を代表とする”城”をイメージする挿絵が載っていた様に思うが、映画では城ではなく”館”であり、ただの建物であった。
 ナルニア国物語の読者は世界中にいる。映画には特定な国・文化の概念を極力除こうとする涙ぐましい努力と飽くまで原作に忠実でありたいというC.S.ルイスへの尊敬の念が込められている。その為、この映画にはそつがない。セットも俳優もクリチャーもロケの背景もCGも全く嫌味がなく出来も申し分ない。原作を読んでない者でも素直に物語に入り込める判りやすさ、美しさに溢れている。だが!ヒットはあるがホームランのない試合のように、それが唯一の欠点だ。全てが余りにお行儀よく仕上がっているために、弾けていないのだ!
 「最後の戦い」を世に送り出したC.S.ルイスに続編を望む声は当然あった。そうしたファンレターにルイスは、「今度は君が続きを書いてみてくれ」と答えたという。ナルニアに熱中した少年時代、私も自分だけのナルニアを作った。ナルニア国物語の冒頭にはどれにも想像力をかき立てる地図の挿絵が付いていた。単なる位置を示すものではなく妖精や顔のある太陽、人魚、植物や人物が描きこまれたその地図が私は大好きで、近所の野原や森や築山を舞台に、ナルニア世界を想像し、自分だけのナルニアの地図を描いたものだ。そこには沼人や巨人やナイアードやドリアード、小人やフォーン、そしてアスランが居た。今、それらの自然は失われ、地図も何処かに行ってしまったけれど、心の中には今でもあの頃のナルニアがある。「100人の読者が居れば100通りのナルニア
がある」と言われ、映像化が最も困難であると言わしめたナルニア。その勇気は賞賛に値する。しかし批判をさける余り、冒険をしなかったのはどうか?どのように作ってもイメージから離れる観客が出るならいっそのこと、観る側にイメージを膨らます余地を残し、観客に判断を委ねてしまった逃げがある。もっと「俺様ナルニア」を作ってみても良いのではないか。大人しすぎる。アスランもただでかいだけの普通のライオンでは芸がない。後光が差すとか(爆)、もっと神秘的な演出を施してもいいのではと思えるくらいの優等生ぶりなのだ。
 4人の子役も頑張っていると思うが覇気がない(私はスーザンが一番いい演技をしてたと思う)。
一番、良かったのはやはり”白い魔女”役。貫禄である。でもまだまだ大人しい。もっと怖くていいのだ。次回作(カスピアン王子のつのぶえ)は、もっと過激かつ心暖まるファンタジーを私は望みます。わがまま?いいの、観客だから(爆)。
 蛇足ですけど、最後のシーン見逃して席立っちゃった人、結構多いんじゃない?一回エンドクレジットが流れてからまたルーシーが出てくる憎い演出、反則ですよね(爆)。自分も危なく席を立つところでした。

ライオンと魔女

ライオンと魔女

  • 作者: C.S.ルイス, 瀬田 貞二
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1966/05
  • メディア: -


映画化に合わせて最近新しく出たけど、自分はこの世代です(爆)。


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